神奈川県立横須賀高等学校

我がラグビー部の取り組みとビジョン

ラグビー部監督 伊藤唯一朗

公立高校が頑張ることの意味

横須賀高校ラグビー部は50名近い選手とマネージャーが所属し、創部65年を迎えようとしている歴史を持つクラブである。過去には全国選抜大会にも出場し、関東大会へ連続出場している。近年シード入りをしていた湘南高校や、部員数を増やして力をつけてきている平塚工科高校などの学校と共に強豪私学に勝利すべく日々練習に励んでいる。
私が2017年4月に横須賀高校に赴任してから多くの指導者やOBの方々とラグビーについて話す機会があった。その中で「神奈川県の高校ラグビーを盛り上げるために、公立高校が頑張らないと。強い私立高校だけでなく、公立高校が県内のトップへ食い込まないといけない」と励まされ、そういった思いが強くなった。また選手たちからも「公立高校No.1」という言葉が力強く伝わってきており、より一層強い思いとなった。選手たちにはラグビーはもちろんのこと、勉強にも学校行事にも全力で取り組み、「公立高校No.1」を実現すべく、選手一人ひとりが地道に努力を積み重ねるよう伝えている。

小さい選手が勝つために

横須賀高校ラグビー部は公立高校の中ではトップを走り続けているが、桐蔭、慶應、東海大相模などの強豪校と比較しても体格や設備の面では高校入学時点でかなりの差がある。高校で初めて楕円球に触れる選手が部員のほとんどを占めており、経験値もあまり多いとはいえない。環境としては決して恵まれているとはいえないが、選手が持ち合わしている素直さと直向きさ、そして努力を惜しまない気質で乗り越えることができると皆が信じている。横須賀高校ラグビー部は体が大きくなくても寄りの速さや数で勝るようハードワークすることや抜群の集中力、仕事量、運動量で相手を凌駕していく。限られた時間の中で常に試合を想定してすることによって、自分たちが強豪校に勝利するために、「思考力」と「組織力」を日々追求している。

自主自律

「自主自律」は横須賀高校の校訓であり、長年横高生にとっては聞き覚えのある言葉である。ラグビー部としてはこれに倣い、目標達成のアプローチの方法は選手の自主性を尊重している。「神奈川ベスト4」という共通の目標を設定しているが、ミーティングやチームトークの中で見出した課題について、主体的に考え、解決策を練り、最善最良の方法を構想する。指導者が一方的に提示するだけでなく、必要なスキルやメニュー、食事・セルフケア等を個人にあった方法で+αとして行っている。目標がきちんと決まっているからこそ、選手自らが考え抜いて練習や日常生活に取り組み、より高いところを目指している。
また選手たちが最善最良の方法を選択できるように、自分たちで体重管理やトレーニングメニューの発案、栄養についてのプレゼンテーションなどを行い、より多くの情報を収集・提供することによって、みんなで目標を達成すべく動いている。

ラグビーの外でも人間性を育む

児童養護施設の子どもたちとの共同作品

EPAフィリピン介護福祉士候補生との交流

ラグビーパークin横須賀

毎日学業とラグビーに追われ、休む間もなく動き続けている選手たち。毎年夏休みの1週間はボランティア週間を作り、少し勉強やラグビーから離れ、いつもと違う時間を過ごすことにしている。昨年は児童養護施設を訪問し、子どもたちと遊んだり、マネージャーが脚本・演出で犯罪防止をテーマに寸劇を演じたり、タグラグビー講習会を行った。またEPAフィリピン介護福祉士候補生との交流で、英語を交えて日本語講座をしたり、日本文化を教えたりと人との繋がりを大切にしている。
特に昨年一年間はRWC2019の機運醸成のために多くのイベントや横須賀市でのPV、トークショーなどを行い、ラグビーの普及に携わってきた。選手たちはRWC2019で史上初のベスト8に輝いたジャパンの戦士たちの活躍ぶりや振る舞いに感化され、その姿に自分たちを重ねている。選手としてまた一人の人間としての可能性や視野を広げるために様々なことにチャレンジし続けている。
いつもの日常とは異なる経験や使命感を持って頑張っている人たちから刺激を受け、自分の新たな可能性を感じ、成長の機会にしてほしい。
ボランティア週間最終日には夏合宿・全国大会予選に向けて、チームビルディングとしてみんなで楽しくBBQをして、仲間同士の結束を高めた。

キャプテンからの一言

可能性にチャレンジ、明日への期待 小口鉄平 

「横須賀高校ラグビー部は昨年先輩たちが果たせなかった『関東大会出場』が目標です。この目標を達成するためには、県予選でベスト4入りを果たさなければなりません。強豪私立と渡り合うために皆《覚悟》をもってラグビーに取り組んでいます。《覚悟》は今年のチームスローガンで、高校からラグビーを始めた選手が多いチームが強豪私立に勝利を掴むためには、生半可な気持ちでは不可能で、全てにおいて全力で取り組んでいくという強い気持ちから設定しました。私立高校とは違い、環境や施設など不十分なところはありますが、選手一人ひとりの知恵を集結させ、工夫を凝らし、気を全面に押し出して、差を埋めていきたい。」

「横須賀高校ラグビー部はバイタリティ溢れる選手たちが明るく、楽しい雰囲気を作り上げている集団です。小さいことを積み上げることによって、一人ひとりの価値を高め、チームが魅力的に成長し、誰もが予想しない結果に繋がると信じています。横須賀高校ラグビー部はそんな可能性を持つ中学生とこれから新たに楕円球に触れ、新たな可能性にチャレンジしたい人たちを待っています。」

注)県立横須賀高校の前身は1907(明治40)年創設の神奈川第四中学、その後1913(大正2)年横須賀中学と改称された。小舟伊助は横須賀中学を卒業、早稲田高等学院から早稲田大に入学しFBとして活躍。1927(昭和2)年の豪州遠征に参加した。さらに1930(昭和5)年9月ジャパンに選抜され、FBとしてカナダに遠征したという記録があるが、残念ながら初テストマッチには出場を果たせなかった。(県協会広報・長井勉)